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名もなき学生が武器を持つまでの時間を映し出す…キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと共に闘った日系人を描いた映画『エルネスト』公開!

2017年10月8日

10月6日(金)よりキューバ革命の英雄チェ・ゲバラと行動を共にした日系人のフレディ前村を題材にした映画『エルネスト』が公開中。10月8日(日)には、公開を記念して、阪本順治監督と主演のオダギリジョーさんによる舞台挨拶がTOHOシネマズなんばで行われた。

 

チェ・ゲバラは、弱者のために立ち上がったキューバ革命の歴史的英雄であり、最後まで理想を追い求め、自らの信念を突き通し、比類なきカリスマ性によって今もなお世界中の人々を魅了して止まない。1967年10月9日、ボリビア戦線にて39歳の若さで命を落としてから半世紀を迎えようとしている。そのボリビア戦線でゲバラと共に行動し、志を貫いて殉じていった唯一の日系人としてフレディ前村ウルタードがいた…

 

映画『エルネスト』は、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと共闘した日系人の生涯を、オダギリジョー主演、阪本順治監督で描いた日本とキューバによる合作映画。フィデル・カストロらとともにキューバ革命を成功させ、1967年にボリビア戦線で命を落としたエルネスト・チェ・ゲバラ。医者を志してキューバの国立ハバナ大学へ留学した日系2世のフレディ前村ウルタードは、キューバ危機の状況下でゲバラと出会い、彼の魅力に心酔した前村はゲバラの部隊に参加し、ボリビアでゲバラとともに行動する。ゲバラからファーストネームである「」を戦士名として授けられた前村は、ボリビア軍事政権へと立ち向かっていく…

今回は上映前にオダギリジョーさんと阪本順治監督が登壇。オダギリさんは、劇場でスタッフの方が用意したたこ焼きを食べ上機嫌なこともあり「今日は頑張ります。宜しくお願いします」と感謝と共に挨拶。阪本監督は「今作の為に3年間も準備し、オダギリ君も自分の役のために様々な準備をしてやっと今日迎えることになりました」と喜びながら「本作は、戦争映画ではなく戦闘する映画でもありません。1人の名も無き学生が武器を持つに至るまでの5年間の学生生活が中心になっています」と作品を紹介。「オダギリ君は凄い仕事をやってくれました。皆さん楽しんで帰ってください」と感謝と共に思いを寄せた。

 

本作は青春映画だといわれることがあるが、阪本監督は「青春映画を撮ったことがないが、恥ずかしいぐらい真っ直ぐな話。こんな世の中ですから、清らかに一筋に生きた人間を観てもらうのも、また新鮮かな」と思っている。主人公のフレディ前村へと役作りをしていく過程について、オダギリさんは悩みながらも「僕のいとこがフレディに見た目がよく似ている。フレディの写真を見て、いとこにそっくりで驚いた。見た目も少しでも似ればいいな」と考えていた。見た目を近づけるために日焼けサロンにも通ったオダギリさんは「最初に出てくるところから見失っちゃうと、どれが僕だかわからなくなる」と言いながら、しっかり作品を見てほしいことを訴えた。なお、本作では全ての台詞がオダギリさんも含めスペイン語だった。京都での舞台挨拶の際には、日本在住のフレディさんのお兄さんの息子さんが来ており「(ボリビアのベニ県の方言が含まれる)スペイン語について『合格だ』と言ってもらった」と一安心した。


今作は阪本監督にとって5度目の海外撮影だったが「様々なことが覆っていく。オダギリ君も海外たくさんやっているので、そういった時に沈まないで振り向かないでどうやって挽回するか」を大事にしていた。キューバは、社会主義国で物資や色々なものがない事情があり「ホテルも頻繁に停電した。僕の部屋のランプの電球が一つずつ消えていく。電球の替えがなく、5つあったのに、最後の1個になり、これが消えたら俺は勉強できない」と冷や冷やした経験があった。それでも、無い物は作ったり、代わりのものを探してきたりし、全て解決していった。

 

実在の人物を主人公にした本作は、阪本監督にとっても初めてだった。人物像を正しく捉える必要があり「ご家族の方を傷つけたくないので、できるだけ取材をした」と本作の制作が3年かかった理由を挙げる。さらに「フレディの学友にも取材していった。フレディの人となりや学生時代のエピソード、フレディがどういう恋愛をしていたかをお聞きし、わからないことにはフィクションを入れた」とはいえ、見聞きしたことや実際の出来事が沢山盛り込まれている。作中ではチェ・ゲバラが日本、しかも大阪にも来ていたことも伝えている。阪本監督は調査したことで「大阪・堺市の工場見学、愛知でトヨタ自動車等を周った。大阪に来て広島が近いことがわかり、他の予定をキャンセルし大阪から電車に乗って広島に向かった」ことが分かった。当時の日本はアメリカとの関係があるので止めようとしたことまで把握している。その後、チェ・ゲバラは39歳で亡くなり、フレディは25歳で亡くなった。オダギリさんにとって、フレディを演じたことで「役者としても人間としても、この役を乗り越えられたことが1つの自信になったことは確か」と感じている。


最後に、オダギリさんから「シネコンにも様々なタイプの映画が上映される中で、こういったタイプの作品が肩を並べるのは凄く意味がある。こういう作品が選べる今の現状が少しでも長引けば」と願いながら「少しでも多くの方に観て頂き、大きく成長すれば、まだ日本映画界の中でも土壌が残る」と期待。「阪本監督をはじめ、色々な才能のある監督が撮りにくい今の現状を打破する1つの作品になってもらえればなと思いますので、皆さんぜひ観た後に感想を広げて頂きたい」とお客さんにお願いした。阪本監督は「3年前にフレディのお姉さんのマリーさんにご挨拶した際に『フレディは医者になって人を助けようとしたにも関わらず、のちに武器を持って人を殺めるかもしれない。その狭間で随分苦しんでいたと思う』と話された」と明かす。さらに「フレディのお母さんであるローサさんは、自分の息子が死んだことが伝わってきても認めようとせず、単身で故郷のボリビアからキューバに行った際に、チェ・ゲバラの当時の奥さんであるアレイダさんから『あなたの息子は事故や病気で亡くなったわけじゃない。私達の為に戦って亡くなったから泣く必要はない』と慰められた。ローサさんは自分の息子を失った悲しみはそういう言葉では慰められず号泣された」ことまで話した。監督は「名もなき学生が武器を持つまでの時間を描くことが大事である。誰かの息子、誰かの兄弟であった彼をオダギリ君を通じて見せればなと思って作りました。よろしければ、皆さんの心の中にフレディが生き続けれてくれれば」と願いを込め、感謝と共に舞台挨拶を終えた。

 

映画『エルネスト』は10月6日(金)より全国ロードショー公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する
映画好き。映画ライター講座を受講し
関西の映画情報サイトを中心に執筆