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『人生タクシー』大阪で上映開始!初日トークショー開催!

2017年5月6日

5月6日(土)より大阪・梅田のテアトル梅田で、イランのジャファル・パナヒ監督最新作『人生タクシー』が上映されている。公開初日には、映画評論家のミルクマン斉藤さんを迎えてトークショーが行われた。

映画『人生タクシー』は、ジャファル・パナヒ監督が、タクシーの乗客たちの様子から、厳しい情報統制下にあるテヘランで暮らす人々の人生模様をドキュメンタリータッチに描き、2015年の第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品。パナヒ監督は、カンヌ・ベネチア・ベルリンの世界3大映画祭で受賞歴を誇る名匠であるが、反体制的な活動を理由に政府から映画監督としての活動を禁じらてもなお、自宅で撮影した映像をもとに映画「これは映画ではない」を発表して話題を集めた。パナヒ監督は、今作で活気に満ちたテヘランの町で自らタクシーを走らせ、様々な乗客を乗せる。ダッシュボードに置かれたカメラには、強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客たちの悲喜こもごもが映し出され、彼らの人生を通してイラン社会の核心へ迫っていく…

上映後、本作のパンフレットに寄稿した映画評論家のミルクマン斉藤さんは、登場するや開口一番に「文句なしに無茶苦茶おもしろいね、この映画」と話す。パナヒ監督について「物凄くおもしろい映画をずっと撮られている人だ」と思っている。「作品を追うごとに技術的に上手くなっている。第1作の『白い風船』の時は師匠であるアッバス・キアロスタミ監督による脚本であり、演出もキアロスタミ監督が撮る児童映画のスタイルに則っている」と捉えている。だが「1作ごとに社会性も娯楽性も強め、カメラの強度が増している。謹慎処分を受けてからもさらに図太くなって、ユーモアセンスが特筆すべきところまできている」と分析。

パナヒ監督は自国のイランでも映画を撮ることを禁止されている。謹慎処分後、20年間は映画を撮ったら逮捕されることになっているが、『これは映画ではない』という映画を撮り、お菓子箱の中にUSBメモリーを入れてカンヌ映画祭に出品したエピソードがある。この逸話について、ミルクマン斉藤さんは「嘘かホントかわからない。嘘だとしてもおもしろい」と感心する。近年の作品を鑑賞する毎に「パナヒさんは健在だ。謹慎中は自身の豪邸のような住居でパーティーを開いたり、海外のマスメディアや学生、若い監督と喋ったりしていた。まだマンションの下辺りまでしか出られなかったが、その次の作品『閉ざされたカーテン』ではもう少し出られるようになり、今作ではテヘラン市内を運転手という設定で回っている。少しずつ謹慎処分からの規制は緩くなっているのか」とパナヒ監督の状況を考察。

本作の設定について、ミルクマン斉藤さんは「映画のどこまでがフィクションだろうか。誰が実在する人物なのか。最後の登場人物は本当だろうが、あとはわからない」と説く。本作は、ドキュメンタリーと定義されていないが、鑑賞してみるとノンフィクションじゃないかと思ってしまう。パナヒ監督作品について「イランの社会に対するアンチテーゼを作品に入れ込んでいる」と分析。「1つのテーゼからぐるっと回って別の局面に回って、また別の局面に回って帰っている。いくつもの円が1点を中心に分散している形になっている」ことがおもしろいと感心。本作について「テヘランをぐるっと周回しているような円軌道が映画から見られる。パナヒさんによる映画の構成方法だ。ドキュメンタリーに見せていながら、全然ドキュメンタリーじゃない。むしろ非常に緻密に計算された映画だ」と論じた。

本作は、様々な事件が偶然多発的に起きているかのように作られており、パナヒ監督の力量が発揮されている。ミルクマン斉藤さんは「飽きない。82分の映画なのに、それを上回るような密度がある」と述べる。本作のおもしろさについて、撮影手法の視点から捉え「カメラが少なくとも3台ある。運転席と助手席、あとは後部を撮っている固定カメラ。また、登場人物が持っているカメラやPCの映像もある。今のメディアの映像を巧みに組み合わせて、編集の妙で見せている」と評した。また、本作はテヘランの街中を臨場感たっぷりに見られる。「イラン映画は車が好きだ。やたら車で移動している時に話す映画は多い気がする。あまり見られない市民の観察眼は間違いがない」と述べた。

最後に、ミルクマン斉藤さんは実際にジャファル・パナヒ監督と話を交わした際のエピソードを明かす。「『チャドルと生きる』が東京フィルメックスで上映されたときにインタビューしている。社会性の強い映画を撮るけど、ガチガチな感じではない。どちらかといえば明るい人で、映画に出てくる人柄そのまま」だという。

映画『人生タクシー』は、テアトル梅田で5月6日(土)から公開。5月12日(金)までは、12時20分~ 、14時5分~、16時50分~、18時35分~の上映。5月13日(土)から5月19日(金)までは9時35分~、13時35分~、15時15分~、19時15分~の上映となっている。なお、『』公開記念として森 達也監督と松江哲明監督による撮り下ろし新作短編映画が本作上映後に公開される。[もしも自分が創作活動を禁止されながらも、創作を続けていくとしたら]をテーマに、5月12日(金)までは森 達也監督による『映画を撮ることを禁じられた映画監督の映画のような映像』、5月13日(土)から5月19日(金)までは松江哲明監督による『ちいさな宝もの Ein kleiner Schatz』が上映される。なお、5月20日(土)からは京都シネマ、5月27日(土)からは元町映画館でも上映が予定されている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する
映画好き。映画ライター講座を受講し
関西の映画情報サイトを中心に執筆