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シネマート心斎橋の最強韓国月間は本当に最強だった…

2017年3月23日

大阪・アメリカ村のシネマート心斎橋は、3月を「最強韓国月間」と題してこれまで以上に韓国映画を立て続けに上映してきた。

筆者は『お嬢さん』『哭声/コクソン』『アシュラ』をシネマート心斎橋で鑑賞し、自身の中で抱いていた韓国映画に対するイメージが覆された。一時の韓流ブームの盛り上がりに対して社に構えて眺めていたこともあり、どちらかといえば、これまでは避けているところもあった。しいて挙げるなら、日本映画にも出演したことのあるペ・デュナの作品は鑑賞していた程度だ。

今回、『哭声/コクソン』に出演の國村隼が韓国の映画賞である第37回青龍映画賞で外国人俳優として初受賞となる男優助演賞と人気スター賞のダブル受賞を果たしたという話題を知り、今回の企画に合わせて他の作品も観てみることにした。

まずは、『お嬢さん』。イギリスの人気ミステリー作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案に、物語の舞台を日本統治下の韓国に置きかえて描いたサスペンスドラマ。1930年代、日本統治下の韓国。スラム街で詐欺グループに育てられた少女スッキは、藤原伯爵と呼ばれる詐欺師から、ある計画を持ちかけられる。それは、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子を誘惑して結婚した後、精神病院に入れて財産を奪い取ろうというものだった。計画に加担することにしたスッキは、人里離れた土地に建つ屋敷で、日本文化に傾倒した支配的な叔父の上月と暮らす秀子のもとで、珠子という名のメイドとして働きはじめる。しかし、献身的なスッキに秀子が少しずつ心を開くようになり、スッキもまた、だます相手のはずの秀子に心惹かれていき……。

特に下調べせずに、日本統治下にある韓国とはどんなものなのだろうと思いながら最初は観ていた。ちょっと普通じゃない世界があるなと作品の世界に没頭し始めて夢中になる映画だなぁと思っていた…すると、いきなりストーリーの展開に騙されてしまう…え、どういうこと!?と思っていたら、作品は視点を変えて第二部が始まり、え、実はそういうことだったの!?と驚きが続いていく。さらにもう一ひねりがあった上での第三部へ…この作品は登場人物同志が騙していくが、登場人物の視点に合わせて観客がまんまと騙されてしまう作品でもあった。また、日本統治下の韓国であるがゆえに、韓国人俳優が日本語のセリフで話しているため、韓国映画に慣れていない人でも観やすいのではないだろうか。なお、R18+成人指定作品ではあるが、日活ロマンポルノの雰囲気もあるため、昨年からの日活ロマンポルノ再興に合わせて観てみるのも一考だ。(個人的には秀子がのん、藤原伯爵がピエール瀧に似ているように見えてもう…)

そして『哭声/コクソン』。『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督によるサスペンススリラー。平和なある村にやってきた、得体の知れないよそ者の男。男が何の目的でこの村に来たのかは誰も知らない。村じゅうに男に関する噂が広がる中、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。殺人を犯した村人に共通していたのが、湿疹でただれた肌に、濁った眼をして、言葉を発することもできない状態で現場にいることだった。この事件を担当する村の警官ジョングは、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。娘を救うためにジョングがよそ者を追い詰めるが、ジョングの行動により村は混乱の渦が巻き起こってしまう…

ひとことで言えば、物凄い作品を観てしまったとしか書きようがない作品だ。好きとか嫌いとかいったことではなく、凄いとしか言いようがない。事件の真相がどういうことなのか結局わからない。誰が善で誰が悪なのかと一言で断定できない。得体の知れないよそ者の男を國村隼さん演じる謎の男が本当に何者なのか…ラストである種の解が提示されるわけだが、これをどう解釈するべきか。キリスト教や清書を基にした解釈を以って自ずと導かれてくる。だが、他の登場人物が結局何者なのかを考えていくと、どこかで行き詰ってしまうと感じた。作品の解釈について科学的に捉えるか、非科学的あるいは宗教的に解釈するか、大いに観た者同士で議論したい。

最後に『アシュラ』。架空の都市「アンナム市」を舞台に描くクライムサスペンス。刑事のハン・ドギョンは、私欲のためにあらゆる犯罪に手を染める市長のパク・ソンベによる悪事の後始末を金で請け負っていた。末期がんの妻の治療費を言い訳に、金になるならどんな悪事にも手を染めるドギョンの弱みを握る検事と検察捜査官は、ドギョンを脅迫。市長の犯罪容疑追及のためにドギョンを利用する。ドギョンを中心に、検察と市長、それぞれの思惑が交差し、生き残りをかけた戦いへと展開する。

韓国のサスペンス、韓国ノワールといえば、こういった作品だよなと思って観ていたが、どこか他とは違うテイストがヒシヒシとスクリーンから伝わってきた。作中、どうしても笑ってしまうシーンがあるのだが、繰り広げられるドラマにはシリアスな雰囲気がある。一つのスクリーンで一緒にしても交わらない要素が存在していて成立しているのは滑稽だがおもしろい。また、クライマックスに向けてカーッチェイスシーンがあるのだが、常軌を逸した光景に魅了された。冷静に考えてみるとどうやって撮影しているのだと思わせるシーンであり、これだけでも必見の作品だ。

三作品それぞれが違った作品であり、大いに楽しむことができた。普通じゃない韓国映画が1ヶ月に同じ映画館で3作品も上映されたことは脅威である。他のエリアでは3作品それぞれが別の劇場で上映されている場合もある。だか、シネマート心斎橋では、この3作品を同時に上映している。まさに、どうかしている(誉め言葉)最強の韓国映画を上映しているシネマート心斎橋だ。今後もシネマート心斎橋で上映される韓国映画には絶えず注目しておきたい。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する
映画好き。映画ライター講座を受講し
関西の映画情報サイトを中心に執筆