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生誕45周年を迎えた「日活ロマンポルノ」は日本映画史の一つとして評価されるべきである

2016年12月30日

大阪・九条のシネ・ヌーヴォで12月24日(土)から特集上映「生誕45周年~ロマンポルノ、狂熱の時代~」が行われている。

2016年11月20日に生誕45周年を迎えた「日活ロマンポルノ」。これを記念し「ロマンポルノリブートプロジェクト」と題して、これまでロマンポルノを撮ったことがない監督たちによる新作ロマンポルノが関西でも2017年初頭から公開される。この企画に合わせて、過去1100本以上の作品から厳選されたクラシックと呼ばれる傑作19本がシネ・ヌーヴォでも上映されることになった。

そもそも、日活ロマンポルノとは、1971年から1988年にかけて日活で製作された成人映画のこと。1950年代後半、様々な悪条件下で映画製作を再開した日活は多くのヒット映画を送り出し、日本映画の黄金時代を支えたが、1960年代後半から次第に映画の観客数減少や経営者のワンマン体質などで経営難に陥り、映画製作が困難になった。そこで、「エロ路線」を前面に押し出し、かつ採算面から低予算で利益が上がるジャンルの作品として、成人映画を主体に変え、「日活ロマンポルノ」が誕生した。ロマンポルノには映画創作上のメリットもあった。予算も限られ、短納期の量産体制という厳しい環境ではあったが、「10分に1回絡みのシーンを作る」「上映時間は70分程度」「モザイク・ボカシは入らない様に対処する」等のフォーマットだけ確実に抑えておけば、後は表現の自由を尊重した、自由度の高い映画作品作りができた。キャリアの浅い監督や脚本・演出の担当者にとっては、自身の作家性を遺憾なく発揮できる稀少な場であり、結果論ではあるが、日活にとっても斜陽期の日本映画界の中にあって、崩壊してゆくスタジオシステムを維持し続け、映画会社として、若手クリエイターの実践的な育成を手がけるための重要な場となった。実際、『おくりびと』の滝田洋二郎監督はロマンポルノ作品で監督デビューし日本アカデミー賞を受賞したという結果がある。

筆者も先日、初めてこの機会に日活ロマンポルノ作品を鑑賞してみた。冒頭の印象は、軽いタッチで始まるなと感じてB級作品なのかと思っていたら、次第に作品に深みがあることに気づいていった。いわゆる「濡れ場」と呼ばれる絡みのシーンがそんなに多くあるようにも感じなかった。それより、脚本がしっかりと構成され1本のドラマとして見ることができる映画として確立されていることに気がついた。時代背景や土地柄を踏まえた上で女性をイキイキと描いている。鑑賞した作品に共通して感じたのは「白」という色を前面に押し出して女性を魅せている。清廉潔白とした女性や艶めかしい女性を魅力的にスクリーンに映すのである。このような女性の見せ方は現在の日本映画にはそう多くない、当時だからこそできた表現方法だったのかもしれない。

どうやら、私は日活ロマンポルノのことを勘違いしていたようだ。一般映画と違って性行為が横行しているだけの作品ではない。それは単なるAVではないか。一本の映画として評価されるべき作品が製作されていたのだ。日本映画・冬の時代といわれ外国映画全盛の時代の頃にも成人映画は量産されていたが、その中には、評価されるべき日活ロマンポルノがあったわけだ。

シネ・ヌーヴォは、日活ロマンポルノ生誕40周年の際に「日活ロマンポルノ名作選」上映を企画したが、住民訴訟が起き和解に落ち着いた件があった。今回は、5年前のような出来事もなく落ち着いて上映が始められた(劇場の外側にはポスターの掲示はなくゾーニングがされているように見受けられる)。なお、東京では新宿武蔵野館では2回の企画に分けて上映が企画されていたが、来年の2回目の企画は武蔵野興業株式会社の都合により急遽、上映中止となった。現在、一般の映画館で日活ロマンポルノの傑作を鑑賞できるのはシネ・ヌーヴォのみとなる。

特集上映「生誕45周年~ロマンポルノ、狂熱の時代~」は大阪・九条のシネ・ヌーヴォにて2016年12月24日(土)から2017年1月20日(日)まで上映される。「ロマンポルノリブートプロジェクト」は、関西ではシネ・リーブル梅田で2017年1月28日(土)から、元町映画館で2017年3月11日(土)から、京都みなみ会館で2月25日(土)から行定勲監督による『ジムノペディに乱れる』、塩田明彦監督による『風に濡れた女』、白石和彌監督による『牝猫たち』、園子温監督による『アンチポルノ』、中田秀夫監督による『ホワイトリリー』がそれぞれ時期をずらして2週間程度上映される予定。

『人妻集団暴行致死事件』

何とも言いようがないタイトルで、まさにタイトルのごとく事件が起こる。殺される女性については、冒頭から艶めかしく映し出され、他に登場する女性とは全く違った美しさに翻弄される。事件が発生した後、夫は妻の遺体を丁寧に清めていく。その光景には、夫婦間にしか発生し得ない愛情の深さを感じ、本作のテーマ性を感じてしまった。恋人の遺体への真の愛を美しく描いた作品として塚本晋也監督の『ヴィタール』を思い出したが、塚本監督も今作を鑑賞したことがあるのではないかと感じた。

『白い指の戯れ』

まさにロマンポルノらしいタイトルだと最初は感じてしまった。しかし、性的な意味合いとして「戯れ」があるのではない。登場する女性らは皆白いシャツを着て、清廉潔白で爽やかな印象を最初は与える。白い袖から見える白い指はスリをする手の指のことを言っているようにも受け取られ、ダブルミーニングのあるタイトルだと感じた。本作の監督は村川透だ。本作で監督デビューし、その後は松田優作の遊戯シリーズや「探偵物語」シリーズ、『あぶない刑事』シリーズ等々多くの作品を監督した。刑事モノのドラマや映画を撮ったルーツにはスリにロマンポルノがあったというのも興味深い。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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